緩やかなペースながらも傑作をリリースし、ライブミュージシャンとしてもその才能をまざまざと見せ付けるなど、力強いソロ活動を続けてきた黒沢健一。ソロ・プロジェクトUSE、また岩瀬敬吾のサポートバンドSpeakersの一員として、相変わらず質の高いプレイを提供し続けてきた木下裕晴。2003年5月9日、この二人がcurve509として再び邂逅する・・・。そのアナウンスを聞いた僕は狂喜するより先に、驚き、そして戸惑った。このユニットの立ち位置を定めることができなかったのである。二人の背後にL⇔Rの姿をダブらせてしまわないだろうか。その不安にも近い漠然とした思い。
5月9日当日、彼らがステージに姿を現した瞬間の胸の高鳴りを、僕は決して忘れない。
そして無事に初陣を見届けると、心の片隅にたちこめていたグレー色の靄は完全に振り払われていた。curve509は、curve509だ。活動を凍結したL⇔Rの音楽が、curve509で解凍されることは一切ない。なぜか?両者の選択としてそこに共通して横たわるのは、L⇔Rは決して“朽ち果てた”バンドではないという認識。その事実を二人とも無言のうちに理解しているからこそ、安易にL⇔Rナンバーをプレイしたりしないのだろう。“Pretty Woman”はフェアだが、“Lazy Girl”はアンフェアなのだ。保守と実験、若々しさと老成のバランスなんてシンメトリ-は、今の彼らには全く意味を持たない。黒沢健一は天才ゆえに赴くまま曲を作り、木下裕晴はクールにベースを弾く。ただそれだけである。