:: びっくり日記

ザ・読書 2008A/W

2008.11.10



ここ2週間ほど、ひたすらカフカの「城」(新潮文庫)を読んでいるんですが、
ご存知のとおり非常に長大な作品なので、途中で飽きて他の本に浮気したりしつつも、
結局読了に向かって一文字ずつ、一行ずつ、一ページずつコツコツと歩を進めるほかなく、
腰を据えて長編と向き合うことで培われる忍耐力こそ読書力、との一念で活字を目で追い続けています。
往けども往けども城に辿り着けぬ主人公K。僕は最終ページまで辿り着けるのでしょうか。乞うご期待。



「城」の次に読みたい小説は、高橋源一郎の最新作「いつかソウル・トレインに乗る日まで」です。
出版社の紹介文には「著者初の、そして最後の超純愛小説」とありますが、おいちょっと待てぃ。
僕は「さようなら、ギャングたち」も純愛小説だと思うぞ。え、違うの?そうか、違うのか・・・。

この新刊、1,890円という価格に少し逡巡してしまうけど、それくらいケチっちゃダメね。
高いと思うなら文庫になるのを待てばいいと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、
高橋源一郎ファンにとって「文庫落ちを待つ」という行為はリスキー以外のなにものでもなく、
彼の小説はその特異でアバンギャルドな性格ゆえに、文庫化されない作品が多数あり、
単行本が買える環境ならまだしも、初版のみで単行本も店頭から消えてしまうのです。
定番となることを拒絶する小説ばかり書くんだから仕方ないですね。それが高橋源一郎。
文芸評論はそこそこ評判になるし、実際によく売れて版を重ねているんですが、
小説となるとこれがなぜか驚くほど売れない。有名人なのにマイナー作家というねじれ現象。

顔と名前は知っていても、小説を読んだことがあるという人がいったいどれだけいるのでしょうか。
たとえば村上春樹を小脇に抱えて電車に乗っている瀟洒な身なりの女性は見かけたことはあっても、
血走った目で高橋源一郎を一心不乱に読み耽っている危ない女性は一度も見たことがありません。

電車の中でジェシ・エド・デイヴィス「ウルル」のライナーを読んでいる女の子を見つけて、
主人公が一目惚れしてしまうという場面が本秀康さんの名著「レコスケくん」にはありますが、
その気持ちがいまの僕にはわかるような気がします。電車で源一郎を読む女性、最高じゃないですか。

そんな高橋源一郎先生の著作を含む古本5冊が、先日ブックオフオンラインから届きました。
簡易包装、というか、本当に紙袋にボボンとブチこんで送っただけという体裁にビビりました。
実店舗と違って、一冊一冊の状態を確認することができないデメリットがあるにしても、
いくつも店舗を歩き回って徒労に終わることを思えば、ネット注文は便利便利ベン・リー。



他にも、夏頃にひっそりと車谷長吉の初期作品集が文庫化されていて、
偶然に店頭で見つけたときには買わなかったんだけど、以来ずっと気になっています。
車谷長吉や嘉村礒多の小説を読むと胸糞悪くなって、挙句には泣きたくなってくるのですが、
その理由を考えてみると、つまり自分の内奥にある強い忌避感や警戒心といったメンタリティーを、
ことごとく刺激して抉り出してしまうからなんですね。優れた純文学には例外なくそういう毒性があります。

そんなこんなでもちろん我が家には小島信夫の未読本もゴッソリ積み重なっている次第。
でもホントにいま一番読みたいのは「オバQ」なんです。いいかげん復刻してほしい。ドロンパに会いたい。


■ Rainy Valentine/UP-BEAT


> 小室先生は某岡村ちゃんみたいに存在自体でか過ぎて業界から消せないからDVD再発するよ。

いざとなったら安い中古VHS見つけてきてDVD-Rに焼いちゃいます(笑)



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