:: びっくり日記

TOUR without electricity 2009 | 世田谷レポ

2009.10.04

ツアー初日、行ってきました。

阿佐ヶ谷スパイダース「桜飛沫」を観るために世田谷パブリックシアターに行ったのが、2006年2月19日
次に会場を訪れるのがまさか健一先生のライブになるなんて、そのときは予想だにしませんでした。

会場に到着して物販コーナーに出向くと、ツアーグッズのTシャツ(青)にプリントミスが発見されたので、
急遽(お詫びとして)健一先生の直筆サインを入れて販売していますという内容のお知らせが掲示されていました。
さらに楽屋でTシャツにサインしている先生の写真に「アクシデント対応中!」とコピーが添えられた告知まで。
その誠実かつ臨機応変な行動力と、ハプニングすらライブの一部として楽しんでしまおうというスタッフの気概に、
思わず笑ってしまいました。何枚サインしたんだろう?楽屋の実況写真も妙に臨場感があってよかったです(笑)
今回僕はクリアファイルとトートバッグだけ購入したので、Tシャツを購入した友人に現物を見せてもらいましたが、
どうやら一部のアルファベットがほんの少しゆがんでいるらしいです。言われなきゃ全然わからないレベルでした。
直筆サインが入ると実際に着用することは難しくなるけど(洗濯で文字も薄くなるし)、ある意味これはレア物です。

まず遠山さんと弦カルの女性4人(全員美人)がステージに、続いて黒シャツ赤ネクタイにジャケットを着た先生が登場。
マイクスタンドの前で姿勢を正し、「♪すべて忘れ去り・・・」と歌い出された瞬間、僕は呼吸が止まりそうになりました。
恐ろしい難度を誇るこの名曲を、作者本人が目の前歌っているという当たり前の光景が、全く現実味を帯びないのです。
一切の楽器を持たず、ピアノと弦カルの音に寄り添いながら、ただ「歌うこと」だけに集中する全身全霊のパフォーマンス。
別世界にトリップしてしまいそうになるあの間奏も、美しい弦楽の響きによって見事に再現されました。なんという陶酔感。

自分の存在を忘れてしまうほど「Love is real?」の世界に引き込まれてしまっていたせいでしょうか、
歌い終わった後の「みなさんこんばんは!」という先生の挨拶が、妙に素っ頓狂なトーンに聞こえて可笑しかったです(笑)
そして、驚愕の1曲目に続く2曲目は・・・まさかの「7Voice」!なんかよくわかんないけど初期L⇔Rまつりに突入しましたー!
黒沢健一という天才ミュージシャンが生んだ数多くの名曲の中でも、僕はこの曲が最高傑作であると信じて疑いません。
あるときは力強く、あるときは繊細に、またあるときは雄弁な7つの声で、楽曲の世界を過不足なく表現していきます。

冒頭2曲で僕はもうかなりグロッキーだったんですけど(笑)、3曲目も容赦なく「Lefty in the Right」から「PACKAGE」!
先生いったいどうしちゃったんでしょうか。なんらかの変調をきたしたとしか思えないこの流れ。曲名をメモる手が震えます。
「ファッション!」というところで、ジャケットの胸元をバッと広げるアクションが郷ひろみのようでかっこよかったぞ!

L⇔R時代の山中湖レコーディングについて述懐する先生。曲ができず缶詰状態だったとき、ふと窓の外を見ると大きな満月が。
完全な円・球体は存在しない(でしたっけ?)というエピソードをきっかけに生まれた名曲が「KEEP THE CIRCLE TURNING」。
先日「詩のチカラ IBARA-KICK」で初演されましたが、僕は今日初めて生で聴きました。あらためて才気あふれる曲ですね。
解決してるのかしてないのかよくわからないエンディングが最高です。この中心がズレていくようなコード感がたまりません。

ここでステージ後方のスクリーンが静かに下りてきて、影絵PVを映しながらの「September Rain」。
前曲の余韻を壊すことなく次曲以降へ繋げていく、とても自然な流れのセットリストだったと思います。

夏は苦手だけど夏をテーマにした60's-70'sの曲は好き、夏を意識して作った曲をやります、と先生。
その言葉を聞いた瞬間、僕の頭に浮かんだのは「君と夏と僕のブルー・ジーン」と「STAY AWHILE」でしたが、
遠山さんのピアノがあの美しいイントロを奏で、まさかの「REMEMBER」です!今日はまさかまさかばかりですみません。
でもホントに冗談のようなセットリストではないでしょうか。他人に言っても信じてもらえないような気がします(笑)
「REMEMBER」においても弦楽アレンジは際立っていました。控えめでありながら、全編にたしかな彩りが付加されていました。
そして「♪2つの時計は・・・」の箇所では、指をそっと2本立てるあのアクションを見ることができて感激しました。
(イメージ図)

もうここまでで十分お腹いっぱいのプログラムなんですけど、さらに「EQUINOX」ですよ?もう徹底的に泣かすつもりなのかと。
先生のMCにもありましたが、一発レコーディングで知られるこの名曲。今日のテイクもそのままCD化オッケーなレベルでした。
先生の歌を聴いて感じる「うまい!」と、うまい棒を食べて感じる「うまい!」では次元が違います!(興奮しすぎて意味不明)

弦カル4名はここでいったん退場。先生は今日はじめてギターを抱えます。「ここから何曲か遠山さんと2人でお送りします」。
まずは「TALK SHOW」。かつてソロライブで披露されたときは、メロディーもラフに崩した扇情的なアレンジが印象的でしたが、
今日は比較的CDに忠実な歌い回しだったような気がします。もちろんフェイクしたりシャウトする場面もありましたけどね。

「アイネ・クライネ・ナハト・ミュージック」では、なんとスクリーンにダウト君(?)アイネ君(?)が帰ってきました!
10年以上前の蔵出し映像をなぜこのタイミングで復活させたんでしょうか?会場の設備が可能にさせたから?

バンドバージョン(Focusツアー)、きくっちゃんと(タワレコ新宿・詩のチカラ)、ひとり弾き語り(タワレコ梅田)と、
実は遠山さんと2人の「Maybe」は今回が初披露なんですよね。優しいピアノとギターのアルペジオがきれいに調和していました。

ここで何の前置きもなく新曲が演奏されました。「♪ほにゃららレインボー」という歌い出しのメロディーは優しく柔らかく、
しかし、曲途中から禍々しく不穏な曲調に変転していくという、ポジとネガのねじれ合いのような何とも不思議な楽曲でした。
うーん、もう一度ちゃんと聴きたい!タイトル紹介はなかったので、曲名はまたもメモカぴあ待ちということになりそうです。
CD未収録の新曲「方舟」「Roch'n Roll Band」と同じく、いわゆるポップス職人というよりも、SSW的な色合いが濃い曲ですね。
黒沢健一が実現していく今後の音楽性と、その針路を占う意味でも極めて重要な1曲になるように思います。

TOUR without electricityではもはや定番となった「Scene39」から、これまたおなじみの「SOCIETY'S LOVE」になだれ込みます。
暴走特急のような激烈バージョンを基調としながら、ちょっとした歌い回しに原曲の持つ気品やエレガントさが残されていました。
今回はエンディングが長めの、Extended versionでしたね。「Satisfaction」を思わせるアドリブも出現してかっこよかったです。

遠山さんが退場してステージ上には先生ひとり。そこで唐突に投げ込まれた「KNOCKIN' ON YOUR DOOR」にマジで腰が抜けました。
郭泰源の剛速球を胸元に投げられたような感じです。あ、たとえが古いですか?じゃあクルーンでもダルビッシュでもいいです。
「SOCIETY'S LOVE」の流れから手拍子を試みようとする観客の、その所作さえも自然と押さえ込んでしまうほどの緊密度の高さ。
これまで聴いたどの「KNOCKIN' ON YOUR DOOR」よりも感動しました。ギターの音、息づかいまでもが心に響いてきたのです。
最後はほとんどアカペラのように歌い上げ、ギターをかき鳴らして締め。張り詰めた空気の鮮やかな開放と、鳴り止まない拍手。
より少ないことは、より豊かなこと・・・Less is More。その言葉を実感しました。今回のライブのハイライトだったと思います。

ここで弦カルもステージに復帰して、メンバー紹介。やはりストリングス・アレンジは遠山さんだったんですね。マルチな才能!

「What is this song?」は、1stソロアルバム「first」レコーディング時の未発表曲。
今回、弦カルとの共演のために曲を探していたところ、その存在を思い出したのだそうです。
なかなか曲タイトルが決まらない先生に業を煮やしたエンジニアのエイドリアン氏が、
朝昼晩「What is this song?」と問い続けたのに、結局タイトル決まらずアルバムにも収録されず。
そして先生が今回10年ぶりに部屋で見つけたテープの表書きを確認してみると、
怒りに満ちた文字で「What is this song?」と書かれていたらしいですよ(笑)
そんな経緯から「『What is this song?』というタイトルに決めました(笑)」と苦笑する先生。
11曲目に披露された新曲とは違い、こちらは流麗なメロディーの軽快なポップソングでしたね。
こんな超名曲をお蔵入りさせているのはどうかと思いますので、次のアルバムには絶対収録して下さい!

「とても大事な曲です」と前置きして、久しぶりに歌われた「WONDERING」で本編終了。
「♪こと、ばに、気付けばいい」という一部分のフィーリングだけを抜き出してみても、
レコーディングした10年前よりも格段にボーカルのコクと深みが増しているように感じました。

アンコール1曲目は「GAME」。これも2002年のNEW VOICESツアー以来、久しぶりの演奏となります。
よく覚えてないんですけど、NEW VOICESツアーで僕は呼吸が苦しくなるほど異常に盛り上がっちゃって、
「死ぬ!死ぬ!」と連呼しながら、この曲のエンディング「♪Wow Wow・・・」を歌っていたそうです(伝聞調)
そのとき隣にいたTAKE-Cくんが、7年後の今日も隣に座っているという事実は単なる偶然なのでしょうか(笑)
以上、いまはなき新宿リキッドルームでの思い出コーナーでした。あそこはめちゃめちゃ床揺れたなー。

今回、弦カルを入れてライブすると聞いたとき、真っ先に僕の頭に浮かんだ曲はやはり「Grow」だったんです。
満を持して、アンコールラストに演奏されました。歌い出して間もなく、ネクタイをクイクイっと緩める先生。
もちろんFocusツアーの「Grow」も感動的だったけど、ストリングスが追加されることで感動も倍化です。
弦カルの間奏後、再び歌に戻ってくるパートがあまりにも美しいので、いよいよ僕は涙ぐんでしまいました。
個人的には「KNOCKIN' ON YOUR DOOR」と共に、本公演のベストパフォーマンスに推したいと思います。

今日のライブを一言で総括するならば、「コンポーザー」黒沢健一の才能とあらためて出会うライブだったと言えます。
その曲が書かれた時代から自由になり、とりまいていた雑音から自由になり、いま聴いて目のさめるような気持ちになる。
そんな名曲たちは、紛れも無く作曲家としての黒沢健一の才気が生み出したものなんだなぁ、という当たり前すぎる事実。
僕はいまさらながらその事実に感動したのです(同じことをかつてブライアン・ウィルソンのライブでも感じました)

さてさて、弦カルが入らない通常版「without electricity」の会場ではいったいどんな曲が聴けるのでしょう。

+ + + + +

TOUR without electricity 2009 ~弦カルspecial THEATER version~
2009.10.4(Sun) 世田谷パブリックシアター
SETLIST

01. Love is real?
02. 7Voice
03. PACKAGE
04. KEEP THE CIRCLE TURNING
05. September Rain
06. REMEMBER
07. EQUINOX
08. TALK SHOW *
09. アイネ・クライネ・ナハト・ミュージック *
10. Maybe *
11. 新曲(タイトル不明 ♪レインボー) *
12. Scene39 *
13. SOCIETY'S LOVE *
14. KNOCKIN' ON YOUR DOOR **
15. What is this song?(未発表曲)
16. WONDERING
EN
17. GAME *
18. Grow

(無印)黒沢健一 + 遠山裕 + 弦カル
* 黒沢健一 + 遠山裕
** 黒沢健一

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以下余談。

風獅子さんをはじめ、会場でお祝いの言葉をかけて下さった皆様、どうもありがとうございました。
開演前、ハリー堀田さんのご紹介でsproutさんと初めてお会いする機会を得ました。この度はどうも失礼しました。
以前から僕はsproutさんの「言葉」に憧れていて、すごく影響を受けたし、勇気をもらうことも少なからずありました。
で、一緒にいたハリーさんにも伝わるほど、ガッチガチに緊張していた僕が発したとっさの一言が「ファンなんです!」
・・・ってどーなのよそれは(笑)
終演後には、これまた日記リンクでお世話になっているちゃんちゃこりんさんとも、念願の初対面を果たしました。
やっぱり緊張しましたが、素敵な笑顔に癒されました。遠路はるばるお疲れ様です。お祝いもありがとうございました。
というわけで、日記リンクのお友達で直接お会いしたことがないのはmayugonさんだけになりました(笑)


■ STORM IN A TEA CUP/The Fortunes



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