:: びっくり日記

「物語の物語」を探す物語

2010.03.30



そもそも資生堂が月刊誌を出していること自体、僕は全然知らなかったのですが、
どうやらこの「花椿」という雑誌はずーっと昔からある由緒正しきものらしいですね。
現在は、「よむ花椿」と「みる花椿」が交互に隔月で刊行されているようです。定価100円也。

最新号である718号に高橋源一郎の書き下ろし小説「物語の物語」が掲載されているという情報を入手、
いてもたってもいられず、リブロ池袋本店へ。雑誌コーナーには見当たらず店員に確認すると、「2Fです」。
「あ、そうですか」「在庫を確認しますのでお待ち下さい」と5分ほど待たされ、結局「売り切れました」。がくっ。
冷静に思い起こせば、いまだかつて、探していた本がリブロで見つかった記憶がほとんどないんですが・・・。
僕の趣味がマニアックなわけではなく、すごく在庫が少ないか、すごく売れているか、だと思うんですけどね。
とりあえず西武のクラブオンポイントが付与されるから優先的に利用しているけど、正直ちょっと頼りない感じ。

となれば、困ったときのジュンク堂ですよ。ジュンク堂はすごいですね。臆面もなく堂々とスケール勝負です。
ぎっしり詰め込まれた書架を見て「図書館」と揶揄する人もいるけど、それがいったいどうしたと言わんばかり。
いわゆるリアル書店は、ネット書店への対抗策として提案型の売場作りやイベント施策などに腐心していて、
そのアイデアと行動力と努力は尊敬に値するけれど、つまるところ僕は「品揃え」で書店を選んでしまうと思う。

あ、話が逸れました。「花椿」ですね。ジュンク堂のカウンターで、物腰柔らかそうな男性スタッフに在庫を確認。
その場でしばらく待っていると、「こちらでよろしいでしょうか?」と。やったー、これですこれです!ハイ、100円。

> かの『千一夜物語』から50数年後、19,999日目の夜に王妃シェヘラザードがシャハリアール王に語った最後の物語。
> すっかり老いさらばえたドン・キホーテやピーターパン、リア王たちが繰り広げる物語です。


花椿公式サイトに記載されている「物語の物語」のあらすじを頭の片隅に置きながら、帰宅後、一息に読了!
氏が得意とするパロディ的手法が駆使された寓話・ファンタジー。ドナルド・バーセルミの「王」を想起させる雰囲気も。
老いた登場人物がシニカルでチャーミングなんですよね。それでいて、読後には不思議なもの悲しさが残ります。
白眉はラストシーン手前、リア王とドン・キホーテの会話です。「物語」の登場人物による、内側からの「物語」の解体。
どんなに名声を得た人物もいつか必ず人々の記憶から「忘れ去られ」、やがて静かに「退場」していく運命にあります。
こういった場面を描くときの高橋源一郎は、もう筆舌に尽くしがたいほどの素晴らしさ。言うなれば、無敵
「さようなら、ギャングたち」「優雅で感傷的な日本野球」「ペンギン村に陽は落ちて」といった過去の名作しかり、
「いつかソウル・トレインに乗る日まで」といった近年の作品でも、その無敵っぷりは十分に証明されているのです。



ちなみに、先日予約した高橋源一郎トークセッション@ジュンク堂はすでに満員御礼でした。4月17日が楽しみ!


■ ばらの花/くるり



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